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父と伊勢湾台風

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B29の空襲によって名古屋城が炎上し、金鯱と共に復元された時に、伊勢湾台風が来たため「金鯱が水を呼んだ」とささやかれました。 伊勢湾台風もB29と同じように南方から来たことに、不思議な偶然を感じます。

外で遊んでいたわたしは、遊び友達のお母さんから「大きな台風が今から来るから、早くおうちに帰りなさい」と言われたので、 しぶしぶ家に帰った。

家に帰るといつも帰りの遅い父が、玄関に板を打ち付けていた。
「まだ仕事したかったが、大きい台風が来ると言うので残業はやめてきた。板打つのを手伝え」
「今度も無駄になるんじゃない」
「そうなると、いいけれどな」

夕ご飯を早く食べ終え寝ていると、雨風が強くなってきた。父が「一階の玄関を見てくる」と言った。ますます雨風が強くなり、 母も不安になったのだろう。
「父さん、早くこっちに来て!死ぬ時は一緒よ」と叫んでいた。

「玄関が持たん」と父が必死の形相で、二階に駆け上がってきた。
「玄関がやられると、あちこちの窓がやられる。雨が入ってくるから、子供たちに布団をかけろ」と、母に言っていた。

玄関で大きな音がしたかと思うと、すごい音をたてて風が入ってきた。子供心にこれは危ないのかなと思った。

何時間がたって、台風が去り部屋を見て驚いた。壁に穴があき、そこから星の光が差し込んでいたからだ。よく助かったものだと思った。

家の外に出ていた父が戻ってきた。
「テレビのアンテナが飛んでなくなっている。探しに行くからお前も来い」
当時テレビは高価で、アンテナもなくしたら大変だった。

台風の過ぎさった夜空は星がきれいで、空気も澄み切っていた。
「家の近くは歩くなよ。瓦が屋根から落ちてきて、頭にでも当たったら大事だからな」

瓦が割れて飛び散っている道を、父と二人でアンテナを探しながら歩いた。父があかるい声で叫んだ。
「あそこにあるの、うちのアンテナじゃないか」
「そうだね。よかった。これで家にかれるね」
「ああ、よかった。アンテナも無事だったし、家族みんなも怪我もなかったからな」

何年たっても、星空のもとアンテナが見つかって喜ぶ父のうれしそうな顔を思い出します。

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